「ところで、肥田式で肺に気が流れるようにするには、どうしたらいいのでしょうか」と町会長。

「先ほど言ったように、お腹を膨らませながら息を吐くのが最も重要な点ですが、顎を軽く引くようにした方が延髄が緩みやすいと思います。」

「なぜ顎を引くようにした方が延髄が緩みやすいのでしょうか」と町会長。

「人間が直立している姿勢は不自然なところがあり、腰椎の5番や膝に若干無理な力がかかるようです。ですから、動物が四本足で立っている姿勢に近い方が自然な姿勢だと言えます。」

「なるほど。動物の首は、頭の重さで下に垂れていますし、腰もそっていますね」と町会長。

「おっしゃる通りです。人間は直立歩行の長い歴史があるので、動物と同じようにはいきません。気持ち、脱力して顎を引くような感じで十分です。」

「肥田式に必要なのは、肥田春充が床を踏み抜いたという型だけだということでしたね」と町会長。

「実は、肥田春充が床を踏み抜いたのを見ていたわけではないので、踏み抜いたとすれば、この型しかないと推定した結果を言いました。」

「その型は、どうやればいいのですか」と町会長。

「実は、1つの型のように言いましたが、正確に言うと2つの型です。」

「踏み抜いたのは、どの型なのでしょうか」と町会長。

「右足を床に打ちつける方だと思います。」

「同じ型なのに、左足を床に打ちつけるのと右足を床に打ちつけるのとがあるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。それで左右の手足の動きが対称になる2つの型があるということになります。僕の場合は、右足に比べると左足が弱いので、左足を床に打ちつける型から入り、次に右足を床に打ちつける型をやり、もう一度左足を床に打ちつける型をやって終わります。」

「左足を床に打ちつける型を2回やるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。先ほど言ったように、人間の祖先は左手首を抜いているので、経絡の連鎖で、左足が右足より弱いからです。」

「実際には、どのようにしたらいいのでしょうか」と町会長。

「両足を自然に開いて、膝を軽く曲げ、腰をそらします。」

「足はどのくらい開くのがいいのでしょうか」と町会長。

「足の開き方とか、膝の曲げ具合は無理のない楽な姿勢でやればいいと思います。何回もやっているうちに、だんだん腰が安定した形になっていきます。」

「あまり深く考えず、楽にやればいいのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。肥田式をやっているうちに腰が変化してくるので、自分の腰の状態に合わせて、安定感を感じるような開き方でやればいいと思います。」

2020/3/10